VMDという言葉は、ブランドの意図を店舗のショーウィンドウやディスプレイ、商品陳列などで伝えながら、お客様に満足して買い物を楽しんでもらうための取り組みを指します。
VMDを効果的に行えば、ブランドや商品の魅力をお客様に伝え、ショップの売上を高めることが可能です。
この記事では、VMDの定義やVMDの基本的なポイントからVMDの展開方法、さらに魅力的な売り場作りの具体的な事例まで詳しく解説します。
効果的なVMDを理解して店舗の売上を伸ばしたい・ファンを増やしたいという方は、ぜひ参考にしてください。
目次
VMDはVisual Merchandisingの略称で、視覚的(ビジュアル)な商業活動(マーチャンダイジング)を表した言葉です。
マーチャンダイジングの意味は幅広く、販売活動や仕入れ、商品管理などを表します。
マーチャンダイジングに含まれる活動の中で、VMDは特に売り場における視覚的な要素の管理を指す言葉です。
商品や装飾、ディスプレイの方法など視覚的な要素を演出し、商品が見やすく購入しやすい売り場を作る活動全般がVMDと呼ばれます。
VMDという言葉が初めて使用された時期は1944年です。
ディスプレイ会社のアルバート・ブリスによってVMDという言葉が提唱されました。
その後、1970年代に顧客の購買意欲をより促進するための戦略としてVMDが発展します。
1970年代にVMDが発展した主な要因は、市場競争が激化し、従来の販促活動だけでは商品が売れにくくなったためです。
20世紀にアメリカでマーケティングという考え方が発展したことにより、VMDもマーケティングの一種として捉えられるようになりました。
また、売り場における販売活動だけでなく、企業やブランドの価値向上においてもVMDが役立てられています。
インターネットやスマートフォンの普及に伴って購買環境が変化したことで、VMDの考え方も時代とともに変化しました。
現代では、消費者行動に合わせたオムニチャネルの対応が必要となっています。
インターネットのバーチャル店舗における対応や、環境問題を考慮した活動もVMDの重要な要素です。
VMDに含まれる主な取り組みは、下記となります。
ポイントを押さえてVMDに取り組むことで、社内でVMDの共通認識が生まれ、他部門と連携して持続発展運営が可能になります。
VMDを導入・推進していくうえで、リアル店舗についてはタイプを分けての展開が必要です。
ブランドの一貫性は保ちながら、店舗が増えた段階で役割・立地・売り上げ規模などの要素からタイプを分けることが重要です。
例として、下記のようにいくつかのタイプが挙げられます。
ブランドの規模や店舗数に応じて分けると良いでしょう。
このように、販売計画・定数定量・ウィンドウ・VPなどのイメージや設置数を店舗タイプごとに最適化することで、店舗の役割を最大限に引き出すことが可能となります。
VMDの商品分類は、生産やバイイングが決まった商品を店頭にどのように展開するかを計画していくことです。
ブランドには、デザイナーが企画した商品に加え、マーケットに応じて必要な商品も投入されます。店頭に商品が並ぶまでには、さまざまな要素の影響により、当初のテーマやイメージどおりのコーディネイトにならないケースもあります。
いずれにしても、最終的にお客様が店頭やオンラインショップでブランドを目にしたとき、シーズンごとにまとまりのある魅力的な品揃えでなければなりません。
お客様との接点である店舗に商品を最終着地させるのは、VMDの仕事です。
そのため、VMDは商品を分類・編集し、どのタイミングでどのようにお客様に表現するのがベストか、MD・デリバリーと調整し、半期単位で展開計画書を作成します。
リアル店舗では、店舗タイプ別にSKU・FKU(店舗に必要なアイテムとフェイス)のシーズンごとの定量を提案することも、VMDの役割です。
導線計画と売り場のレイアウトは、新店出店・リニューアル・見直し時に都度行います。
導線計画は、売り場やコーナーの配置と同時に店内を快適に回遊できるよう、通路を設けることです。設計と連携し、主導線・副導線とVP・PPの関係を連動させましょう。
導線から見えないところにVPを設置しても効果は期待できないため、既存店であればお客様視点でショップにアプローチし、正しい位置にVP・PPがあるか確認しましょう。
売り場レイアウトは、商品リレーションを考慮した什器の定数配置と、90㎝幅以上の売場内導線に加え、レジ前・ミラー前・フィッティング前には広めの通路を意識し、店舗タイプ別に(地型によりアレンジが必要)基本を設けると良いでしょう。
VP・PP・IPは、VMDを運営コントロールするうえで、その場所と展開手法を定める用語です。
VP・PPはアピール力を持ち、「見せ場」としてシーズン性や重点商品の訴求と販売を目的とし、視認性の高い場で変化や鮮度を訴求します。
IPは什器1スパン単位の商品展開を指し、「買う場」としてその陳列手法を定め、品揃えの魅力を訴求します。
【VP(ビジュアル・プレゼンテーション)】 店に訪れたお客様・通りかかったお客様に入店してもらうための仕組みを作る |
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VPは、ブランドイメージやシーズンごとのテーマ、重点商品をお客様に提案し、変化や鮮度を感じてもらう場です。 VPの主な役割は、シーズンごとに適切な商品を配置し、お客様が入店するきっかけを作ることです。 ショップのVPはカテゴリーごとに設置し、複数個所あることが望ましいです。 |
【PP(ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション)】 商品グループの特徴が分かる見出しで回遊したくなる導線上の集視ポイントを作る |
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PPは、商品グループやカテゴリーの特徴が一目で分かる見出しのような役割を果たします。 ライフスタイルグッズ・キッズ関連商品では、商品の魅力や特徴を伝えるほか、コーディネートの例を提示するなどの工夫がポイントとなります。 一方で、PPの役割は1スパンごとのIP商品をピックアップして紹介するため、ラグジュアリーなアパレルやバッグ、シューズの売り場でゆったりと商品1点1点が認識できるIP展開をしている場合は、PPを施さないことが主流となっています。 |
【IP(アイテム・プレゼンテーション)】 お客様が商品を選びやすいように陳列する |
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IPとは、品揃えの表現で店頭SKUとFKU(店舗に必要なアイテムとフェイス)を管理したりすることです。 IPは什器1スパンごとのコントロールです。すべての商品を什器ごとにお客様が選びやすく、買いやすいように並べることが重要です。 また、IPの展開のなかで色の並べ方やルールを聞かれることもあります。色の配列やアイテム集積スパンでは考慮しますが、基本は「明るい→暗い」です。 80年代のようにカラーバリエーションが12色など多色の商品は少なく、またアイテム集積商品でもトレンドにより差し色が入り、ピンクの横に茶があったほうが良かったり、黒の横が黄色が良かったりする例もあります。 また、IPのサイズ出しについてはブランドによりさまざまです。 |
〇導線とVP
導線とVPをリンクさせると自然とお客様は回遊します。フロアやゾーンを代表するメインVPでは体数を多く、コーナーごとのVPでは2~3体と強弱をつけて、主導線からの見え方に注意して配置しましょう。
〇アイテムIP+PPとコーディネイトIP+PP
PPを展開するときの注意点は関連するIPの顔出しであることを意識し、そのスパンがアイテム展開であればPPもアイテムのみで展開し、IPがコーディネイト展開であればコーディネイトを促進するPPにすることが望ましいです。
例:IPが紅茶缶ならば上部PPも紅茶缶のみ、IPがパンプスならばPPもパンプスのみという展開が主流です(例外もあります)。
IPがオン・ザ・テーブルコーディネイトならPPもコーディネイト訴求を行うなど、関連するアイテムのみで展開することで、そのコーナーの専門性が際立って見えてきます。
ここからはVMDの事例として、フランスに拠点を置く百貨店であるギャラリーラファイエットとボンマルシェの売り場作りを紹介します。
〇ギャラリーラファイエット
ギャラリーラファイエットはパリに本店を構えるほか、フランスの各都市やドイツのベルリンにも出店している百貨店です。
ギャラリーラファイエットでは、サスティナブルを意識したポップアップショップやユニークなイベントなど、お客様の目を引くVMDが展開されています。
オスマン店では、2018年と2019年にフェアトレードやサスティナブルをテーマにした企画が催されました。
独自の審査基準を満たす商品にオリジナルラベルを付けて販売することで、環境や社会に対する問題意識を提起しています。
2019年3月にオープンしたシャンゼリゼ店は、ショップスタッフではなく、パーソナルスタイリストとしてお客様に寄り添う新し接客を行い、百貨店の枠を超えた印象のポップアップやイベントなど、
ユニークな企画を短サイクルで開催する戦略で、新たな客層にアプローチしています。
〇ボンマルシェ
ボンマルシェのVMDは、服飾や美容、飲食など異なる売り場で一貫したテーマを持つディスプレイが展開されている点が特徴です。
たとえば、2019年には70年代ロックと現代を融合したテーマに、ボディージュエリーやパンクをテーマにしたクッキングショーなどが催されました。
また、毎回異なる都市を取り上げてファッションや文化を伝えるVMDも行われています。
ここまで、VMDの概要やポイント、さらにVMDを取り入れた展開方法を紹介しました。
VMDは顧客にブランドの意図やデザイナーの想いをショップで伝え、販売活動の補助と同時に多く存在する他店との差別化を図ることも大切です。
VMDを効果的に導入したいときは、効果性の高いノウハウと実績を持つコンサルティング会社への依頼がおすすめです。
VMDに特化した専門コンサルティング会社のM.D.Pに依頼すれば、企業やブランドに合わせたVMDが展開できます。
M.D.Pの強みは、綿密な店頭調査に基づき、自社をVMD視点で知るお手伝いから、デザイナー、MD、店舗設計やサービスとリンクし多面的な提案と実践補助を行う点です。
さらに、売り場のレイアウト展開やシーズンごとの商品展開計画、マニュアル開発、VMD担当者育成、社員へのVMD教育など総合的なサポートも提供します。
競合他社とは異なるVMDで自社のブランドイメージやコンセプトを表現したいときは、ぜひM.D.Pへ相談してください。
VMDを効果的に展開すれば、顧客に加え新規のお客様が入店するきっかけを作り、店内の回遊から商品の購入までスムーズに導くことが可能です。
M.D.Pは、企業やブランドのコンセプトをお客様に伝えるだけでなく、店舗の売上アップに役立つVMD戦略の提案やサポートも行います。
VMDによって売上を伸ばしたい・店舗のファンをさらに増やしたいという方は、ぜひ一度M.D.Pにご相談ください。